社説:金足農野球部処分 部活の暴力一切許すな

春夏通算9度の甲子園大会に出場し、第100回全国高校野球選手権大会で準優勝した金足農高野球部が、2年生が1年生に暴力を伴ういじめをしたとして3カ月の対外試合禁止処分を受けた。同校の不祥事は何とも残念としか言いようがない。

4年前の夏の甲子園大会で、金足農高は私立の強豪校を次々となぎ倒し、第1回大会の秋田中(現秋田高)以来、県勢として103年ぶりに決勝に進んだ。大阪桐蔭高に敗れ、東北勢初の深紅の大優勝旗を手にすることはできなかったが、公立の農業高校の奮闘は「金農旋風」として社会現象にもなり、県民栄誉章を受章した。

それまでのスポーツ分野での県民栄誉章受章者は、世界規模の大会での上位入賞者が中心だった。佐竹敬久知事は「県民が大きな元気をもらい、これほど燃えたことはなく、影響力も大きかった」と異例の決定を説明した。全国でもこれほど応援されたチームはなかなか見当たらないのではないか。

それだけに一層、部員には責任ある行動が求められたはずだ。学校側や監督らは、部員に自覚を持つよう指導してきたのだろうか。今回の処分を重く受け止め、暴力、いじめとは無縁の新しい金足農高野球部として生まれ変わる必要がある。

部活動では、ある程度の上下関係は避けられないかもしれない。だが、旧態依然のやり方で上級生が下級生を支配するような行為は許されない。

日本高野連は暴力根絶を強く訴えてきた。特に上級生が下級生に制裁を科す行為は厳しく戒めてきた。それでも処分を受ける学校は全国で相次いでいる。理不尽な上級生の行為で、才能ある下級生がどれだけ退部したか分からない。

運動部では多少の暴力は許されると思うなら大きな間違いだ。学校教育法ではいかなる暴力も禁止されている。暴力で競技力が養われることはない。暴力を認める体質が残っているのなら、すぐに断ち切らなくてはならない。

教育の一環として行われる部活動では、指導者の暴言、暴力も看過できない。加害者はからかい半分で行ったとしても、被害者は身体だけでなく、精神的にも大きなダメージが残ってしまう。絶対にやってはいけない行為だ。

スポーツをする以上、クリーンでフェアであってほしい。日ごろの練習、生活態度からスポーツマンシップを意識しないと試合で生かされるはずもない。勝ち負けよりも大事なことだ。

暴言、暴力、いじめ、ハラスメントなどは一切許容してはいけない。今もこれらの行為をしている指導者、上級生がいるとしたら、すぐに考えを改めてほしい。金足農高の不祥事をひとごとと思わず、どの学校でも部員同士が敬意を払い、お互いを高め合っていけるような部活動をしてもらいたい。